今更ながら、ストブリの歴史

突然、ストブリの歴史を説明しちゃおう。

ストームブリンガー――マイクル・ムアコックの『エルリック・サーガ』のTRPGである。

日本における"Stormbringer"RPGシリーズは、1988年にホビージャパンが販売した『ストームブリンガー』に端を発する。これはChaosium社の"Stormbringer 3rd Edition"にあたる(はずです。たぶん)。同社が基本システムとするBRP(ベーシックロールプレイング )をコアにしており、デザイナーはなんと『T&T』のケン・セント・アンドレ

ストブリは精霊やデーモンの召喚による独自の魔法が魅力的なシステムで、いわゆる「呪文」というものを持っておらず、魔法的な力を行使したい場合は、精霊なりデーモンなりを召喚(そして封印)し、その力を借りなければならない(ルーンの使用や、サプリメントで追加されたものもあるけど)。

さらに魔法と密接に関係した「カルト」の扱いも特殊。<法>や<混沌>、<精霊の王>には「執行人」という人間がいて、こいつらは、自らの神のためならかなり非常識なことをしなければならない。例えば、火の精霊の王であるカカタルの執行人は、所構わず放火して回ることが推奨されてたりするのだ(おいおい)。で、そんなことをすればするほど「エイラーン」という数値が貯まっていき、これが一定量になるとPCはPOWの上昇などの恩恵を得られる。

とまあ、かなりキレた感じのシステムを誇るストブリは、絶望的な死と破壊が、良く言えば絶妙なカタルシスを与えてくれるものだったんだけど、悪く言えばダイスの目によっては簡単に即死してしまう大味さでもあり…。この辺りのバランスを、より「普通に」調節したものが1993年の"Elric!"。日本では1995年に『エルリック!』として販売された。

エルリック!ではついに、一般的な「呪文」が登場。威力や効果は低いものの(能力値を一時的に1〜3ポイント上昇させるとか、まあその程度)、以前よりも魔法が簡単に扱えるようになった。代わりに、ウリだった「召喚」魔法が高いMPやPOWが必須となり、おいそれと使えなくなっている。召喚が簡単に使えないのはちょっと残念だけど、ただ、使うことさえできれば相変わらず強力であることには変わりないので、これを冒険を続ける1つのモチベーションにすることもできる。ほか、神々に助けを乞う「祈願」(確率はわずか1〜3%でしかない)や、GMが強力なマジックアイテムを登場させるための「呪付」(ルーンを刻むことで、アイテムに独自の魔法的な力を与えるもので、GMのみが導入できる)などが導入され、ストブリにあった大雑把さが良い意味でも悪い意味でもなくなっている。

両者は、同じ背景世界、同じBRPシステムでありながら、キャラクターの強さ、魔法やカルトの扱いなどで大きな隔たりがある。どちらも一長一短あり、どちらが上とは一概には言えない。特に、ちょっと無茶なゲームが楽しめるストブリは、他のRPGにはない魅力を持っており、古くからのファンも多い。逆に、原作の再現性から見れば断然エルリック!が上。

現在、このシリーズは、"Stormbringer 5th Edition"として2001年に復活している(loveichiは未入手)。名前こそ『ストブリ』だけど、中身は『エルリック!』のマイナーチェンジ。英語のみの販売だけど、日本語版発売の噂もあるし、英語がOKならAmazonで気軽に買うことも可能。

で、最新のストブリ5thのちょっと前に出たd20システム版が『DLoM』。既に説明しているように明らかな失敗作ながら、loveichiがどうしても嫌いになれないシステムなんです、コレが(笑)。